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武蔵野の片隅に寝ていた

tokutomi

彼ら当局者は無神無霊魂の信者で、無神無霊魂を標榜した幸徳らこそ真の永生の信者である。しかし当局者も全く無霊魂を信じきれぬと見える、彼らも幽霊が恐いと見える、死後の干渉を見ればわかる。恐いはずである。幸徳らは死ぬるどころか活溌溌地に生きている。現に武蔵野の片隅に寝ていたかくいう僕を曳きずって来て、ここに永生不滅の証拠を見せている。死んだ者も恐ければ、生きた者も恐い。死減一等の連中を地方監獄に送る途中警護の仰山さ、始終短銃を囚徒の頭に差つけるなぞ、――その恐がりようもあまりひどいではないか。

謀叛論(草稿)/徳冨蘆花
生年月日: 1868年10月25日
生まれ: 熊本県 水俣市
裁判 (日本の名随筆) 単行本 – 1998/9