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部屋の暗い片隅

hagiwara

詩とは、決してそんな奇怪な鬼のやうなものではなく、実は却つて我々とは親しみ易い兄妹や愛人のやうなものである。
 私どもは時々、不具な子供のやうないぢらしい心で、部屋の暗い片隅にすすり泣きをする。さういふ時、ぴつたりと肩により添ひながら、ふるへる自分の心臓の上に、やさしい手をおいてくれる乙女がある。その看護婦の乙女が詩である。

詩集〈月に吠える〉全篇 従兄 萩原栄次氏に捧ぐ/萩原朔太郎
月に吠える (愛蔵版詩集シリーズ) 単行本 – 1999/10/25