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今後の創作の参考にしていただければ望外の喜び

shiro

投稿があった場合、どんな講評をしているのか、というお尋ねがあったので、過去にお送りしたものを幾つか掲載してみたい。
いずれも短編。すべて掲載基準に達さなかったものである。

基本的に、3度は読んでからこれらを書く。
参考にして欲しいし、必要以上に萎縮して欲しくもないから、なるべく具体的にこうしてみては、ということも書くようにしている。
勿論、それが的外れであることも考えられるのであり、取り入れるか否かはご本人次第だ。

加地は、作品を送ってきてくださった方が、もっと作りこんだ素晴らしい作品をまた送ってきてくださるのを、いつか「片隅」に掲載させてくださいとお答えする日を楽しみに、これらを書いている。
質問や反論があれば送ってきて欲しい、とも書き添えることが多い。

なお、この講評部分の前段に、面白かったであるとか、この一文が印象に残ったなどの、感想も添えているので念の為。

【一本目。和風ファンタジー短編】
・文章はしっかりしており、特に読み難いようなことはない。ただし、表現が秀逸である、と感じる箇所も残念ながらなかった。
・内容について、上橋菜穂子作品を髣髴とさせる独特のファンタジー世界がしっかりと作れている。短編であるがゆえに踏み込んだ描写が見当たらなかったが、もっとどういう世界でどういう歴史の上にこうなったのか、というものが透けて見えると格段に世界の重みが増すと思われる。
・構成は悪くはないが、冒頭のシーンはいかにもありがちで、その部分で読むのをやめてしまう読者が一定数存在すると考えられる。
 いっそ、お互いを殺し掛ける現在軸での初対面シーンを冒頭にするなど、工夫が欲しい。
・化け物がにえを要求し、それに反発する、というのは日本人には馴染み深い物語であり、馴染み深いだけに、あと一つ、インパクトがあれば良かったのではないか。
 たとえば、化け物は背中合わせの鏡面世界で化け物に捧げられたものが行き着く先である、など、少し考えただけでも浮かぶものはある。考えてみていただきたい。
 互いに別世界の想い人である、というのはセンチメンタルで良い題材だが、そうであるなら「やはり想い人とは違う」あるいは「元の想い人より惹かれてしまう」などの展開もあるのでは。
・総じて、題材に対し、書き込み不足であり、短いと思われる。
 この長さにしてしまうのであれば、にえがどうの村人がどうの、というのは逆に日本人ならたやすく想像することを逆手にとって「当然のこと」として敢えて書き落とし、スパンと小気味よく一気に謎が明かされ、「まだ、大丈夫だ」という狂気をはらんだ未来への展望を提示して終わっても良いと思われた。

【二本目。現代もの。書簡形式短編】
・ほぼすべてが○○(作品を特定してしまうため伏せます)の手紙で構成されているが、語り手である××との関わりや、××があえて語る理由などがほとんど窺えない。
 ○○の手紙だけで語りきるか、××が語る意義をもう少し考えてみたほうが良いのではないか。
・文章などは整っており、非常に巧い。
 が、この○○の手紙はあまりに「手紙文」でありすぎ、時代が不鮮明である。現代にしては古風であるし、古風なというには背景がなく、平成26年という記号が宙に浮いている。
 男と○○の関係なども、ありがちといえばこれほどありがちなものもないため、どこで何を読ませるか、今一度焦点をしっかりと絞って狙い定め、構成を練ってから書くということを考えていただきたい。

【三本目。現代もの短編】
・文章力、表現力は一定水準を十分に満たしており、読みやすくこなれた印象を受ける。
・作品内容についてだが、「○○○○○○(作品を特定してしまうため伏せます)」ことをめぐる思索は非常に興味深く、よいテーマだった。
 ただし、冒頭で友人が出てくる必要性、過去の恋愛における一連がすべて回想の語りで展開されるくだりについては、必要性がはっきりしなかった。
 一般的に、どんな話でもひとは「現在進行形」の話を好む。既に過ぎ去った過去のことは、よほど興味を持っていれば受け入れるが、唐突に聞かされても「それがどうした」と感じるものである。
 そういう意味で、本作の構成はあまり良いとは言えない。
 逆に、就職活動以降の展開は非常にポップで悲哀と生真面目さのバランスが秀逸であった。
 たとえば、この就職活動から話を始め、随所で過去の恋愛がどう失敗に終わったのかが読者に少しずつわかるような書かれ方であれば印象は相当に違うはずである。
 まずは「何を書きたいのか」その為に必要なエピソードを書き出し、どう並べるのが一番効果的であるかを吟味し、構成を練ることをお勧めしたい。

あなたの作品が、「片隅」を彩ってくださることを期待して、待っています。