F T R @
九州発! 日本中が楽しくなるWEB文芸誌。美術館・博物館のイベント情報、気になる本や本屋さん、読みたい物語がきっと見付かります

希望の古本屋 4 岩尾晋作

tent

古本に意味を
 
 カモシカ書店は夏休みはお祭りやお盆休みで大変混雑した。
 いつも来てくれる人はもちろんだが、夏休みの楽しみとしては県外からの旅の人たちである。
 とくに多いのは福岡人だが、福岡人については日頃から多い。
 夏休みに特化して言うと、関西からの旅人ではないだろうか。
 
 本屋が好きで本屋を全国巡る人はいる。
 多いのか多くないのか本屋にいると分からなくなるのだが、たしかに実感として結構いるのだ。
 鹿児島からリピーターとして来てくれた人はすぐに二人浮かぶし、大阪からのリピーターもすぐに浮かぶ。
 鵠沼に配送したことも2回ある。
 
 私は旅人に大変関心があるのである。
 
 観光の形態は今急速に変わっている。
 用意された、お誂え向きの体験は加速度的に価値を失い、その土地でしかできない、ちょっとした体験に意味を見出す人が多い。その土地で、というよりも旅でしか出来ないことを多くの人が求めている。
 このこととリンクするのは、みんなが同じ音楽を聴いたり、同じテレビ番組を見ていたりしていた時代が終焉を迎えつつあるということだろう。
 
 私はお盆明けに連休を取り、北九州の門司港にあるゲストハウス、「トゥネル」を訪ねた。
 木造3階建ての遊郭から、旅館、そして空き家へと変貌した物件を再生させ、1階部分を3部屋のゲストハウスとして機能させている。
 実際に泊まって感じたのは、何と言っても走りながら考えるということの軽快さと迫力である。
 3階建ての物件ならどうしてもまず、3フロアをどう使うかを考えてしまうのが普通だろう。
 しかし「トゥネル」のオーナーは上2階を即切り捨て、地上1階だけで営業を始めている。
 これはなかなかできそうで出来ない所業である。
 確かに1階だけだと非常にコンパクトで最小限のコストとリスクで始められる。
 この小さく始める、というのは今最も重要なセンスだと私には思える。
 
 二元論からの解放、脱却、というのが現在進行形のあらゆるシーンにおける象徴的現象である。
 リーマンか自営か、若者か年寄りか、男か女か、既婚か未婚か、勝ちか負けか、何かが好きか嫌いか、それぞれまだまだ危うさを漂わせながら、必死の足掻きと開拓が、様々な場面で繰り広げられる。うまくいくケースといかないケースもあるだろう。
 ただ、起業、独立ということに関しては、リーマンか自営かという二元論は日に日に解体されているのだろうと感じる。
 
 リーマンが国民の多数派になったのはここ40年ぐらいの間である。
 1次産業から2次3次へと人材が必要であった国家政策から社会保障政策は勤め人とその家族に有利なように整備されていく。
 勤め人が支持母体の政党と国家の利害が最優先の政党の意見が一致し、急速に福利厚生が勤め人のために整えられていった。
 その中で自営業者は、2次3次産業へと国策的移行からあぶれたもの、はみだしたものの受け皿として社会的な存在意義が新しく生まれ始めた。
 詳しいことは専門の本を読んでほしいが、私が言いたいのは、時代に必要な労働環境は国家が提唱するが、それ以外の選択肢も多分にあるということである。そして、ある程度型にはまりながら同時に型からはみ出る、ということも可能だし、現実に結構たくさんいるということだ。
 要するに、こうしていれば安心だ、ということが分からなくなりつつある時代性と、もともとそういう安定に吐き気がしてしまう人口に対する一定の割合で存在する人類のパイオニアたちが合わさって、今まさに何でもできる時代が到来しているのである。
 何でもできるというのは文字通りなんでもできるので大いにチャレンジしてもらいたいが、チャレンジすれば継続できるわけでは当然ない。継続というのは大変重要で、収益モデルや資金の回収利回りという意味では継続は最低限の必要条件である。
 
 起業して継続して業績を上げ、もちろん顧客や地域に貢献していく、というのは起業家全てが意識しないといけないことだ。
 だからチャレンジしやすい時代に生きている今だからこそ、なおさら継続という価値に目を向けてほしいと思っている。
 
 何が言いたいのか全く分からない原稿になりそうで私は少し恐ろしくなった。
 この原稿は今のところ私の本業ではないので、仕事としては優先度は最も後ろのほうになる。
 だからクオリティの面で非常に心配だが、これ以上時間を割けないことをどうか理解していただきたい。
 収益とは継続性のことだからである。
 何か付加価値を創造することができるなら、それを生活しながら継続するために利益を必要とする。
 それを意識しようがしまいが成立することがビジネスである。ドラッカーの言っていることを極言すると、同じことになる。
 
 さて本×カフェ、という黄金の組み合わせは今後常識になるだろう。そして競合が増え、真っ赤な海になるのかもしれない。
 よくそういう話も聞くし、自分でも考えなくもない。
 でも、と思う。
 本を扱うのは経験がないと絶対にできない、と。
 つまり本×カフェは比較的可能だとしても本屋×カフェは恐らくそうそう競合がうまれるわけではない。
 本屋だけ、という商売は今後ほとんど生まれないだろう。
 現状のシステムでは、本屋は継続するに充分な営業利益率を確保できないからである。
 
 今後新規参入としてブレイクするのは、言い切ってもいい、本屋×宿泊施設である。
 本屋、が新規参入が困難な事業だから私は平気でここにアイデアが書ける。
 本屋×宿泊施設。これは間違いなく時代を席巻する。
 わたしは早くそれに挑戦したいのだ。
 オリンピックまでに、こなれて営業できるようには。

image

岩尾晋作(Iwao Shinsaku)

カモシカ書店店主
1982年生 大分県大分市出身