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70年代、工作舎という未曾有の編集集団がいた

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『工作舎物語 眠りたくなかった時代』 臼田 捷治

このWEB文芸誌『片隅』は『伽鹿舎』が運営している。
伽鹿舎の名前を決めたとき「舎」の字を選んだのは、ひとつにこの『工作舎』という存在への憧憬があった。

工作舎って何だろう、という人もいるかもしれない。
工作舎は出版社だ。無論、今も存在している。公式サイトはこちら

元々、1971年に松岡正剛氏が創業した。
松岡氏と言えば、書評サイト『松岡正剛の千夜千冊』を思い出す人も多いかもしれない。編集者であり、作家である松岡氏は、元は広告会社のひとで、その頃に始めたタブロイド版をつうじて、稲垣足穂、土方巽、寺山修司、唐十郎、横尾忠則など錚々たる面々と親交を深めたひとである。その松岡氏が友人たちと立ち上げたのが『工作舎』だった。

工作舎物語1970年代、松岡正剛が率いた初期工作舎。
オブジェマガジン『遊』を刊行し、昼夜を問わず一時は200人が出入りした不夜城。
従来にない編集方法と集団体制から、とてつもなく凄いことが始まっていた──。
荒俣宏をはじめデザイナー、編集者、写真家、舞踊家、画家、翻訳家ら多くの才能がここから生まれたのはなぜか。
松岡、戸田ツトム、松田行正、祖父江慎らに取材し、破天荒な、夢のような、最低で最高の日々をよみがえらせるノンフィクション。

単行本 - 2014/11/13
臼田 捷治 (著)

この本は、そんな工作舎のことを書いた本だ。
著者の臼田氏は、松岡氏と親交も深い編集者で、同業者が、同時代に見つめてきた『工作舎』という異能集団について、適度に近く、適度に遠い位置から書き起こしている。

『工作舎』はとにかく破天荒だった。
見たこともない雑誌を出版した。デザイン重視の自由な紙面はあまりに新しすぎて、多くの若者を虜にしたし、同業者の度肝を抜いた。
舎員はそれほど多くない。だが、ほとんど無償のような形で手伝った多くの才能が集まった。
昼も夜もなく、突っ走り続けたエネルギーはどこから生み出されたのか。

松岡正剛氏は『プロとアマに差はない』と公言している。アマチュアが奢ってそういうのでなく、プロが心底からそう言っているからこの言葉は重い。その重さは、力量でもある。プロとアマに差はない。そうしてかくも、差はあるのだ。

『工作舎』という煌くばかりの新星がどんな風に走ったのか。
この本には溢れるほどの熱量と示唆が詰まっている。

MEMO:この本の出版社は左右社
2005年設立の比較的新しい総合出版社だが、『友とともにあり、つねに人間と社会の本意を尋ね求める出版活動』を標榜し、知見に溢れる面白い本を多数出版している。