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【カジドク】豊かな物悲しさというもの 『異国の出来事』 ウィリアム・トレヴァー

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 異国での出来事というのは非日常感がある、のが普通かもしれない。
 実は加地は異国に出掛けても、日常の延長だな、と感じることの方が多い。
 無論、労働から解放されているし、目に映るものは新鮮だ。それでも心持というものは多少の高揚のほか、そう大きくは変わらない。
 ウィリアム・トレヴァーはアイルランドの誇る短編小説の妙手だ。現代最高峰といっても良いかもしれない。
 その筆致は静かで何気ないのにとても豊かで、どこかに寂しさを纏わり着かせている。
 寂しさや物悲しさは、実はこんなにも豊かな感情のたゆたいだ。
 場所が異国ともなるとなおさら、それは際立って印象深くなる。
 この紹介を書いている真っ最中、ウィリアム・トレヴァーの訃報が飛び込んできた。
 もうこの作家の紡ぐものがこれ以上は増えないということを、酷く惜しいと感じる。身勝手に、そう感じる。
 せめて繰り返し、読み続けて浸ってみよう、豊かな物悲しさというものに。
 

pb194459-s異国の出来事』 ウィリアム・トレヴァー
国書刊行会
栩木伸明 訳
発売日 2016/02/25
判型 四六変型判
ISBN 978-4-336-05916-1
ページ数 352 頁
定価 2,592円 (本体価格2,400円) 

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加地 葉(kaji yo)1976.9.24 島根県生まれ熊本市育ち現在も在住

本業は事務屋。伽鹿舎では編集・デザイン補助・DTP全般ならびに運営と意思決定、対外交渉。
運動全般観戦専門。野球が好き。上司には大体「やれば出来るのにやらないヤツ」と思われている。